前回、シートラはこう言い残しました——「壁を、一枚作ってしまった。それが、冷蔵庫の未来を縛った」。壁が冷蔵庫を縛る、とは何なのか。その答えを、今日お話しします。
先に正直に言います。当時の判断は、間違っていなかったとすら思っていました。キッチンのフードストッカー(食品庫)を、壁で仕切って隠したのです。生活感が見えなくなって、見た目はスッキリ。当時の私は、心から満足していました。——8年後の今日までは。
キーワードは一つ。「見た目を取って、機能を失った」。8年が経ち、家族構成も買い物スタイルも変わりました。冷蔵庫を大きくしたい。冷凍庫を一台足したい。そう思ったとき——その壁が、邪魔をしました。今日は、お金を出しても気軽には直せない「間取りの後悔」の話です。※これは著者宅の一例。間取り・家電事情は各家庭で異なります。
🐶 シートラ:富士住建で埼玉県内に家を建築。チワワ3匹・爬虫類・水亀と暮らす入居8年目の施主。第5章「後悔防止と未来へのまとめ編」も2回目。前回は「お金を出せば後付けで直せる小さな後悔」を語ったが、今回はその一段奥——キッチンのフードストッカーを壁で仕切ったせいで、冷蔵庫のサイズアップも冷凍庫の増設もできなくなった「間取りの後悔」を棚卸しする当事者。当時は「生活感が隠れてスッキリ」と満足していた判断が、8年後にどう響いたかを正直に語る。家には今も99点満足という前提は、崩さない。
🧚 ふじまる:「いいことじゃない、スッキリするでしょ」と一度は同意しながら、すぐに「それ、当時のあなたが自分で選んだ壁でしょ」「で、その壁、壊すといくら?」と核心を突いてくる妖精。今回は感傷に逃げ込もうとするシートラを、「見た目を取って、冷蔵庫の未来を売ったわけだ」と容赦なく言語化する役。読者が思う「結局それ、どうにかなるの?」の本音を代弁する。
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まず、誤解してほしくないことがあります。壁で仕切るという判断は、当時、ちゃんと「正しかった」のです。後悔の話だからといって、最初から失敗だったわけではありません。
フードストッカー、つまり食品庫は、暮らしの生活感のかたまりです。買い置きのレトルト、ペットボトルの箱買い、ストック品、ゴミ袋の予備——どれも必要なものですが、キッチンから丸見えだと、どうしても雑然と見えます。だから私は、そのスペースを壁で仕切って、視線から隠すことを選びました。来客があっても生活感を見せずに済む。キッチンに立つたび、すっきりした景色が広がる。その満足は、本物でした。
これから話す「後悔」は、家への不満ではありません。家そのものには今も大満足(99点)です。むしろ、仕切り壁は入居して数年は完全に正解でした。問題は、「8年で暮らしが変わったとき、その壁が動かせなかった」こと。当時の正しさと、将来の柔軟性は、必ずしも一致しない——それを、これから建てるあなたに先回りで伝えたいのです。間取りや家電事情は各家庭で異なり、本記事は著者宅の一例です。
転機は、暮らしの変化でした。8年のあいだに家族構成も、買い物のスタイルも変わった。まとめ買いが増え、冷凍ストックが増えた。そこで自然に芽生えたのが、「冷蔵庫をワンサイズ大きくしたい」「セカンド冷凍庫を一台足したい」という、ごく普通の願いでした。
ところが——できなかった。正確には、仕切り壁が、3つの自由を静かに奪っていたのです。気づいたとき、ため息をのみこみました。
仕切り壁を作ったことで、冷蔵庫の置き場所は壁と壁にはさまれた一区画に固定されました。つまり、そこに収まるサイズの冷蔵庫しか買えない。横に大きいものも、奥行きのあるものも、入らない。家電は年々大型化するのに、わが家の冷蔵庫スペースだけ、8年前の壁の位置で止まっているのです。
仮にサイズが合っても、次の壁が立ちはだかります。搬入経路です。仕切ったことで通路が狭まり、大型の冷蔵庫やセカンド冷凍庫が、そもそも搬入口を通れない。買えても、運び込めない。家電量販店で寸法を測りながら、眉根が寄りました。
セカンド冷凍庫を足すには、置き場所と専用コンセントが要ります。けれど壁で仕切った区画には、増設用の余白も、電源の余裕もなかった。仕切らなければ、隣のスペースに一台ぽんと置けたはずなのに。胸の奥が、ちくりとしました。
ここで、当時の判断と8年後の現実を、対比で並べてみます。同じ一枚の壁が、「入居直後」には満足を生み、「8年後」には足かせになった。この落差こそが、間取りの後悔の正体です。
| 観点 | 当時の判断(入居直後) | 8年後の現実 |
|---|---|---|
| 見た目 | 生活感が隠れてスッキリ◎ | 今もスッキリ◎ |
| 冷蔵庫サイズ | 今の冷蔵庫はぴったり | 壁の幅以上に大きくできない |
| 搬入経路 | 当時は問題なし | 大型家電が通せない |
| 冷凍庫の増設 | そもそも考えていなかった | 置き場・電源の余白がない |
| 修正のしやすさ | — | 壁の撤去+内装復旧で高額 |
※著者宅の一例です。間取り・家電サイズ・搬入経路・電源位置は各家庭で異なります。費用や可否は物件・施工内容により大きく変わります。特定企業の優劣を示すものではありません。
まとめ買い・冷凍ストックが増えたら、セカンド冷凍庫は本当に便利です。だからこそ、置き場所と電源の「余白」を残せるかが分かれ目。前開き・小型タイプなら省スペースで足しやすいので、増設したくなったときの現実解になります。これから建てる方は、置く前提で一区画あけておくのがおすすめです。
「3つの自由」を並べて見えてきたのは、仕切り壁の本質でした。壁は、空間を整える代わりに、その向こう側へ広がる自由を、静かに閉じてしまう。冷蔵庫だけの話ではありません。仕切るという判断は、いつだって「今の見た目」と「未来の柔軟性」を天秤にかけているのです。
当時の私は、その天秤に気づいていませんでした。目の前の「スッキリ」は分かりやすく、8年後の「冷蔵庫を大きくしたい」は、まだ存在しない願いだったから。人は、今ある満足は数えられても、未来に生まれる不便までは、なかなか想像できない。眉根が寄ったのは、家電量販店ではなく、本当はあの打ち合わせの瞬間に戻りたかったからかもしれません。
だからこそ、これから建てる人に伝えたい判断基準は、たった一つです。「その仕切り、10年後の家電サイズ・台数まで想像してから決めたか?」と自問すること。冷蔵庫も、洗濯機も、家電は年々大きく・多くなります。仕切って隠すなら、その区画に"余白"を残せるか。可動式の収納や、後から動かせる間仕切りで代用できないか。見た目のスッキリは、将来の選択肢と引き換えになることがある——この一点さえ持っていれば、私の後悔は、たぶん起きませんでした。
「その仕切り、10年後も大丈夫か」を一緒に詰められるかは、打ち合わせで相談できる相手かどうかで大きく変わります。すまいのいろはPlusなら、複数社の相談先を無料で比較でき、キッチンの家電計画や間取りの将来性まで一緒に考えられます。壁は、建ててからでは動かせません。図面の段階で相談しておくのが、間取りの後悔を防ぐ最短ルートです。
今日の話は、正直に言って重めでした。前回の「お金を出せば後付けで直せる後悔」から、一段奥へ。お金を出しても、気軽には直せない「間取りの後悔」。壁を壊せば直せはしますが、撤去費に内装の復旧が乗り、"気軽に"とは言えない金額になります。間取りは、建ててしまうと動かせない——それが、第5章で一番伝えたかったことの一つです。
でも、ここで終わりにはしません。何度も言うように、私はこの家に99点満足しています。後悔は1点ぶん。残りの99点には、「やってよかった」と胸を張れる判断が、ぎっしり詰まっています。後悔の話ばかりが続いたので、次回からはそっち側——明るい話を、しようと思います。
念のため、もう一度書いておきます。私は、富士住建で建てた家に満足しています。だから、紹介します。今日の後悔は、家への不満ではなく、「建てる前の自分が、10年後の暮らしまで想像できていたら」という施主側の判断の話です。満足しているからこそ、いい面も、直せない後悔も、両方フェアにお伝えします。これから建てるあなたが、同じ壁で未来を縛らないように。
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